装置の仕組み | 16

蒸発器

装置の仕組み INDEX

第5章から第8章では身近な現象を例に「蒸発」についてお話しました。本章では「蒸発器」の熱の伝わり方や構造について説明していきます。
蒸発器は第10章で説明したように低温の冷媒が蒸発して冷却効果をもたらす熱交換器です。身近な例として、冷房運転中のエアコンの室内機(フィンコイル蒸発器)を見ていきましょう。

熱の移動と伝熱管内の流動様相

熱の移動と伝熱管内の流動様相

図1 熱の移動と伝熱管内の流動様相

一般的に室内機の熱交換器は冷媒が流れる伝熱管、伝熱面積を増やして効率よく空気を冷却するためのアルミフィン、空気を送るファンから構成されます。膨張弁にて減圧された低温の冷媒は液と蒸気が混ざった状態で伝熱管内を流れ、空気から熱を奪って沸騰や蒸発が起こり全て蒸気となります。
このように蒸発器では冷媒と被冷却物が伝熱管を介して熱のやりとり”熱交換”を行っています。

蒸発器の種類・特徴・使用例

蒸発器は用途に合わせて様々なものがあります。本項では2種類の蒸発器について紹介します。

①フィンコイル蒸発器

一般的にフィンコイル蒸発器は乾式蒸発器と呼ばれ、冷媒を用いて管外の空気(被冷却物)の冷却を行う熱交換器です。家庭用冷蔵庫や冷凍冷蔵倉庫の冷却、食品の凍結に用いられます。冷やすのに必要な熱量が大きいほど蒸発器は大型になります。また空気側の熱伝達率は冷媒側より10倍以上低いため、管外にフィンを多数取りつけることで効率を上げています。

※熱伝達率とは、2つの物質間での熱の伝わりやすさのことを言います。

図2 エアコン室内機

図2 エアコン室内機

被冷却物の温度を0℃以下にする際は、空気中の水分が熱交換器表面で霜となり、成長してフィンの隙間を埋めて熱交換の効率を低下させてしまうので、 霜を溶かすシステムが必要になります。前川製作所ではフィンの着霜問題の解決に向けた研究を日々行っています。

図3 着霜の時間経過の様子

図3 着霜の時間経過の様子

②シェルアンドチューブ蒸発器

シェルアンドチューブ蒸発器には満液式と乾式があります。

満液式はシェルと呼ばれる容器に冷媒液を満たし、シェル内に挿入されている多数の伝熱管内に水やブラインを流すことで熱交換を行う蒸発器です(図4)。伝熱管が冷媒液で浸されているので、伝熱を低下させる要因である伝熱面の乾き(冷媒ガスとの熱交換)が生じることがなく、効率良く熱交換を行うことができます。

乾式はシェル内に多数の伝熱管を入れ、管内に冷媒を、管外に被冷却物の水やブラインを流すことで熱交換を行う蒸発器です(図5)。シェル内にはバッフルプレートを入れ、被冷却液が冷却管に対して直角に流れるようにして熱伝達率を向上させています。

図4 満液式シェルアンドチューブ熱交換器の構造

図4 満液式シェルアンドチューブ熱交換器の構造

図5 乾式シェルアンドチューブ熱交換器の構造

図5 乾式シェルアンドチューブ熱交換器の構造

動画 アンモニアが管表面で沸騰する様子