装置の仕組み | 11

圧縮機の話

装置の仕組み INDEX

第10章では、冷凍サイクルは、大きく分けて「蒸発器」→「注射器」→「液体を貯めるタンク」→「流量を調整する弁」→「蒸発器」で構成され、それぞれの機器の中を冷媒が、状態を変化させながら通過することによって、食品などを冷やすことができることを説明し、この冷凍サイクルが、皆さんの身近なところで使われていることをお話しました。
この章からはこの冷凍サイクルに使われている実際の機器についてそれぞれ焦点を当て、掘り下げた話をしていきます。

今回は、前章で「注射器」と表現されている機械について焦点を当て説明します。前章ではこの注射器を押したり引いたりすることによって冷媒を蒸発器から吸い上げ、凝縮器に送っていました。注射器ですので人の手で押したり、引いたりすることでピストンを動かしていますが、皆さんのご家庭にあるエアコンや冷蔵庫ではそんなことしていませんよね。
実際の冷凍装置では、モータやエンジンなどを用いて注射器に当たる部分を動かして、冷媒を送り出しています。

冷凍サイクルの中で冷媒を送り出す注射器の役割をする機械を「圧縮機(あっしゅくき)」と呼びます。

圧縮機とは、その名の通りで蒸発して気体となった「冷媒」を圧縮する機械です。そんなことを言われてもピンときませんよね。皆さんの身の周りでは、自転車タイヤの空気入れを想像してもらうとわかりやすいと思います。自転車の空気入れも圧縮機の一種です。
タイヤの空気入れの断面模式図を下図に示します。みなさんがタイヤに空気を入れるとき、空気入れのハンドルを押し引きしますよね。このときの空気入れのなかで何が起こっているかを説明します。

ハンドルの先にはピストンと呼ばれる部品がついていて、外側の円筒(シリンダと呼びます)部分に接しています。シリンダの先端には2つの管がついており、弁によってふたがされています。この弁はばねで管の端部に押し付けられています。
ハンドルを引っ張るとピストンとシリンダで作られる空間が膨張し、断熱変化の式に従い、空気入れ内部の圧力が低下します。圧力が低下すると、大気との圧力差によって弁が開きシリンダの中に空気が流れ込みます。
反対にハンドルを押し込むと、シリンダのなかの圧力が上昇しますから、入口側の弁はばねの力で閉じて、大気へ流出しなくなります。そのままハンドルを押し込むとシリンダの中の空気の圧力は上昇し、ついにはタイヤのなかの空気の圧力よりも高くなり出口側の弁が開き、空気がタイヤの中に流れ込みます。
このようにハンドルを押し引きすることによって、タイヤの中に空気を送り込んでいます。
上で説明したように、ある空間(空気入れの場合はピストンとシリンダによってできた空間)に閉じ込めたガスの体積を小さくする(ハンドルを押し込む)ことによって圧力を上昇させる機械を「容積型圧縮機」といいます。
この容積型圧縮機には様々な種類があり、容積を小さくする機構で大別すると「往復式」と「回転式」の2種類があります。
往復式は、前述のタイヤの空気入れのように、ピストンが往復運動することによってガスを圧縮する機械で、レシプロ圧縮機や斜板式圧縮機が含まれます。
回転式は、往復式とは異なりピストンのような往復する部品を持たず、ねじや渦巻きを組み合わせ、回転させたり旋回させたりすることによってガスを圧縮する機械が含まれます。
また、容積型圧縮機以外に速度型圧縮機(ターボ圧縮機)があります。各圧縮方式にはそれぞれの利点と特徴があり、用途に合わせて圧縮機が選択されています。
この後の章で、前川製作所で採用しているレシプロ圧縮機、スクリュー圧縮機、スクロール圧縮機、そしてターボ圧縮機について説明していきます。

参考文献)

  • 1)日本機械学会編、機械工学便覧α5、α5-26