フード・バリュー・ネットワーク | 10

食と水のコラボレーションが創る融合技術の展開(2)

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おわりに

パンのアロマと表面色は、消費者の知覚器官の全てを遠隔から刺激して、新しく遭遇したパンに対する新しい食嗜好や感性を形成させるブランディング(差別化)要因であると考えられている。特に、加熱温度条件によって変化するクラスト表面色の変化を「着色特性曲線」と定義し、この曲線から消費者が「おいしそう」と感じる「焼き色」を予測する方法を提唱した。

クラストで産生するアロマ成分は、その移動方向により5つに分類され、消費者を刺激するアロマはクラストから移動して、100℃の一定温度でクッキングされているクラムのにおい成分と混合されるアロマである。また、このようにアロマを制御するためには、焼成中に生地表面にクラストが形成され始めるタイミングであると予測された。小麦粉に関する「情報」、パンの「表面色」および「アロマ」は、消費者の五感コミュニケーションを刺激して食嗜好の改変や小麦粉製品の「ブランド化」を促す要因であり、ブランディング技術を導入する方法の開発は、筆者が提唱している「食感性工学」の肝要な研究テーマとなっている。

「ブランディング」の目的は同一カテゴリーの商品群の中で差別化を図れるブランド商品を創出して継続的に育成していくことにある。しかし、TV-CFなどの視聴覚情報に曝されている消費者の購買意欲もダイナミックに変動しており、この状況に対応するブランディング技法もマーケターのセンスと経験に頼らざるを得ない現状が続いている。このように、ブランディング技法の開発が重要視されてきた理由は、これに失敗すると市場における自社商品のコモディティ化、すなわち消費者の購買意欲を低減させる商品化が進行し、残された唯一の差別化要因である価格による熾烈な競争を強いられるからである。したがって、消費者の五感コラボレーション機能を刺激して購買意欲を喚起させる心理的要因を抽出し、これらを活性化するブランディングの方法論を開発することは、長年に渡って熱望されてきている重要課題となっている。