2013年05月31日
食品凍結のメカニズムを解明する”氷結晶観察法”が日本冷凍空調学会学術賞を受賞!
このたび、前川製作所の研究開発の成果である凍結魚肉の氷結晶の観察法に関する論文発表が、日本冷凍空調学会「平成24年度学術賞」を受賞しましたのでご 報告します。本件は、食品の凍結中に形成される氷結晶が食品組織にどのような影響を与えるのかを解析・評価するための手段として活用されます。
受賞論文: 低温粘着フィルムを利用した凍結魚肉内氷結晶観察法
受賞者: 河野晋治・高橋朋子・篠崎聰
発表媒体: 日本冷凍空調学会論文集 Vol.29,No.1(2012) pp.53-58
技術内容: 食品を凍結する際に食品内部に氷結晶が形成されるが、その形状によっては食品に大きな影響を与え、ときには品質を劣化させてしまうことが知られている。従って、食品の凍結保管において氷結晶性状の観察・評価は重要な項目の一つである。しかし従来の凍結食品内の氷結晶観察法は、手法の煩雑さや前処理に長時間を要したりするなど問題点が多く、迅速かつ簡易的な手法が求められていた。 そこで前川製作所では医学病理学分野において開発されていた”低温粘着フィルム”の原理および特性に着目し、このフィルムを凍結食品内に形成された氷結晶観察のための標本作成に応用し、実際に冷凍マグロの赤身肉を用いて氷結晶観察を試み、また手法の評価を行った。
観察結果: 従来の観察法である”凍結置換法”と”低温粘着フィルム法”とで冷凍マグロの氷結晶観察を行い比較した。両者ともほぼ同等の氷結晶観察が可能であることが 判った。一方、観察に要する処理時間は、”凍結置換法”が2?4週間かかるところ、”低温粘着フィルム法”では20から30分程度に大幅短縮できることが 判った。 このように観察時間が大幅に短縮できること、また観察が容易になることで、一つの凍結サンプルから数十枚の連続切片の氷結晶観察が可能となり、3次元画像 に再構築することが出来る。さらに再構築3次元像から氷結晶部分のみを抽出することも可能となる。このように3次元画像が構築できることで急速凍結と通常凍結を行った際の氷結晶の立体的形状の違いが明確に判る。
まとめ・今後の展開: 本研究によって、食品の凍 結状態が迅速かつ容易に観察できる手法を確立することができた。これによって、凍結方法(例えば、連続式フリーザーやバッチ式フリーザーなどの方式)や凍結速度の違いが食品に及ぼす影響を容易に観察・評価することが可能となり、品質を考慮に入れた効率的凍結条件の提案等にも役立つ手法になると考えられる。
category : 受賞歴など