食品技術
食品凍結と品質評価
01凍結食品中の氷結晶の解析
食品を保存する方法として、缶詰、乾燥、塩蔵、燻製などがありますが、その中でも冷凍は色、味、香り、成分、食感、鮮度などの食品が本来持つ状態を長時間保存できる方法です。
しかし、食品を冷凍する際には食品の中には氷の結晶ができ、食品を内部から破壊することがあります。食品の内部が氷によって破壊されると、解凍したときにドリップと呼ばれる液体が出てきます。このドリップの中には様々な栄養成分やうま味成分が含まれており、味や鮮度が落ちます。また、氷による組織の破壊で食感も変化します。
ゆっくり凍らせる(緩慢凍結)と食品の中の氷が大きな結晶となり、すばやく凍らせる(急速凍結)と小さな結晶となるため、食品の破壊を最小限に抑えるには、すばやく凍らせることが良いのですが、その分大きなエネルギーが必要となります。
食品の種類や大きさ、冷凍方法によっても凍結速度は変わってきます。省エネルギー、高品質という観点からみると、食品ごとに最適な凍結条件・方法は異なってきます。私たちは凍結食品にできる氷結晶の大きさや形を解析することによって、凍結が食品に及ぼす影響を確認し、それぞれの食品に合ったより良い凍結について研究しています。
02品質評価技術
食品を凍結解凍した際の品質に関して様々な指標から評価するため、食品・バイオ実験室では多様な分析を行っています。
2.1 テクスチャー
圧力をかけられる中華まん生地
食品に一定速度で圧縮変形を加えることにより、応力とひずみを計測することができます。計測された破断応力は硬さを表しており、食品の最終評価だけでなく、食品の加工工程における変化や状態を把握する基準としても利用できます。練り製品のプリプリ感や肉まんの弾力を数値で表す時に使います。
2.2 色
色の計測は国際基準としてXYZやL*a*b*、L*C*hなど様々な表色系が色彩コミュニケーションのルールとして使用されています。当グループでは、これらの表色系を利用して色の数値化を行い、色彩の変化や評価基準として利用しています。例えば、マグロは鮮度が落ちると色が黒ずんでくるため、わずかな色の変化を測定することで鮮度を判断する場合に使います。その他、豚肉や牛肉の鮮度にも応用できます。
2.3 成分
分食品分野における成分は、大きくタンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・無機質(ミネラル)の栄養成分が挙げられます。その他にも食品の構成要素である色・味・香り・テクスチャーも化学成分によって成り立っています。食品中では色々な成分が混在しているため、測定は各物質の特性(大きさ・極性・光学的特性など)を利用して行います。揮発性物質は焼成後のパンの劣化、可溶性物質は鶏肉の鮮度や魚類の旨味成分などの変化を知る時に利用します。
2.4 組織
食品の構造、特に微細構造については顕微鏡などを用いて観察・評価を行っています。これらを用いることにより、食品の加工工程における変化や状態を把握することが可能となります。緩慢凍結と急速凍結の違いや保管温度の影響などを比較するときに利用します。
2.5 温度・湿度
温度・湿度は目に見えませんが、常に体感しているものであり、物体や周辺雰囲気に大きな影響を及ぼす要素です。温度は食品に限らず、様々な物質の状態・雰囲気を把握するために必要不可欠であり、湿度の制御は生鮮食品の保管などにも深く関係しています。
2.6 その他
上記以外の食品に関わる分析として、比熱・比重・粘度などが挙げられます。これらを測定することにより、冷却熱量の算出や保管による食品の劣化度合を確認することができます。また、食品に関わらず、物性のわからない混合物の測定も可能です。
測定機器例:示差走査熱量計、比重計、粘度計