冷やす仕組み | 09
蒸発した冷媒を液体に戻す
2017年9月22日
蒸発した気体の「冷媒」を集めて液体に戻し、再び蒸発器に送る方法を考えてみましょう。
液体が気体へ変化することを「蒸発」といいます。圧力を下げれば低温でも蒸発すること(例えば水は富士山の頂上、気圧630hPaで87.2℃で蒸発)がわかりました。ここでは、逆の現象、気体から液体への変化である「凝縮」について考えてみましょう。
もっとも身近な凝縮といえば結露です。冬に締め切った部屋で鍋料理を食べていると、冷たい窓ガラスにたくさん水滴がついていることがあると思います。鍋からでた湯気(水蒸気)で部屋の湿度が上がり、冷たい窓ガラス表面で水蒸気が「凝縮」して液体の水に戻ったのです。夏に冷たい飲み物の入ったコップの表面に水滴が付くのも同じで、空気中の水蒸気がコップ表面で冷やされて凝縮したのです。熱せられて蒸発した水(水蒸気)は、冷やすと凝縮して元の液体の水に戻ることがわかりました。
写真1 氷水が入ったビーカー(左)と水だけ入ったビーカー(右)
ビーカーの表面が結露している。
あれ?冷蔵庫やクーラーを作って物を冷やしたいのに、蒸発した冷媒を凝縮させるのにも氷などで冷やさないといけなくて、このままでは使えませんね。もっと高い温度でも凝縮するように工夫できるでしょうか?
シンプルに考えてみましょう。蒸発と凝縮は反対の現象です。蒸発させるとき、圧力を下げると蒸発しやすくなりましたね。じゃあ反対の凝縮のとき、圧力を上げてみるとどうなるでしょうか?
蒸発したブタンガスを注射器にいれて圧力を上げてみました。下のほうにすこし液体がたまっているのがわかりますね。この時の温度はどうなっているでしょうか?
ブタンガスを注射器にいれて圧力を上げる実験動画
※作業者は十分に安全に配慮し実験を行っておりますので、絶対に真似しないでください。
ブタンガスは大気圧で-0.5℃で凝縮しますが、いま圧力をあげたら約35℃なのに凝縮していましたね。これで、あまり冷やさなくても冷媒を液に戻せることがわかりました。ただし、注射器のピストンを戻すと圧力が戻ってしまい、せっかく液化した冷媒がまた蒸発してしまうので、一方通行の弁を付けた容器の中にどんどん押し込んでいってあげる必要があります。また、温度が上がっているので風などで冷ます必要があります。
図1 注射器と弁でブタンの液を作る
あとは、こうやってせっせと液体に戻した冷媒をもう一回蒸発器に入れればいいだけです。
次の章では、これまでの話をまとめて、さらに自動化するところまで考えてみます。