はじめに | 03

熱と温度

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もう少し熱と温度の話

物に熱を加えると、物の温度はどんどん上がります。しかし、例えばガスコンロとヤカンでお湯を沸かしているときにコンロの火を止めて放っておくと、お湯が冷めてしまいます。これは、ヤカンやお湯の表面から空気中に熱が奪われてしまったためです。

ヤカンでお湯を沸かすのも、火を止めて温度が下がっていくのも、“伝熱“といって、熱が高い温度のものから低い温度のものに伝わっていく現象が関わっています。そして最終的には、温度差のあった二つの物質の温度は同じになります。これを「熱力学的平衡の状態に向かう」と表現します。ヤカンの例では、長い時間置いておくと、部屋の温度とヤカンの中の水の温度が同じになります。
ではお湯の温度を下げたくないときにはどうしたら良いでしょうか?火を止めても温度が下がらないようにするには、保温できるポット「まほうびん」にお湯を入れます。「まほうびん」はどのような仕組みで熱を伝わりにくくしているでしょうか?「まほうびん」は、容器を二重構造にしてあり、お湯の入った内側の容器と、外気に触れる外側の容器とを離して熱が伝わりにくくしてあります。さらに、二重容器の内側と外側の隙間から空気を除いて真空にすることで、より一層熱が伝わりにくくなっています。ちなみに発泡スチロール製容器の保温性が良いのも、発泡スチロール内に隙間が多く、熱が伝わりにくいからです。

逆に熱を伝えやすくする必要のあるところには、熱を伝えやすい性質の物質を選んで用います。金属全般は熱を伝えやすいので、鍋やヤカン、フライパンなどには金属が用いられています。
熱は物質ではありませんが蓄えることが出来ます。漁師さんの料理には浜辺で石を焼いて熱々の状態のものを鍋の中に入れる調理法があります。何百℃にも熱した石に蓄えられた熱が、鍋の中のお湯を一瞬で沸騰させるのを目にしたことがあるのではないでしょうか。これは、ゆっくり時間をかけて高温になった石から熱を一気に放出して起こる現象です。分子の運動である熱にはその量の大小を示す“熱量”という概念もあります。1リットルのお湯の90℃と60℃とでは、90℃のほうが沢山の熱量を蓄えていることになります。水の量が増えると、蓄えられる熱量も増えます。熱した石の例では、石に蓄えられた熱量が水に移動し、その熱量の分だけ水の温度が上がることになります。