冷やす仕組み | 05

冷やす話 冷媒の話

冷やす仕組み INDEX

ここからは冷たくするにはどうしたら良いかを考えてみましょう。
昔、冷蔵庫の無い頃、スイカを冷やして食べるには冷たい井戸水に浸していました。でもそれでは、夏の気温から井戸水程度の温度までしか冷やせません。八百屋で買った30℃くらいのスイカを20℃くらいに冷やす程度でしょうか。世の中に“冷凍機”が生み出され、家庭用の冷蔵庫として普及するまではそれが限界でした。
冬場に0℃を下回る地域では、天然の氷を春や夏まで蓄えておくことで“冷たい熱”を利用し、なんとか涼を取ったり食材を冷やしたりしていました。しかしそれも氷の温度までという限界があります。
氷が出来るくらいまで温度を冷やす技術は、「はじめに」でご紹介したように、ドイツのリンデ(Linde)がアンモニアを冷媒にした“蒸気圧縮式冷凍サイクル”を開発してから本格化していきました。その技術の鍵となるのが、気体の圧縮と膨張、そして蒸発と凝縮という現象です。そして、“利用したい温度よりも低い温度で蒸発する”、“適当な温度で凝縮させることができる”という二つの条件が整った“気体”を探し当てたこと、それが冷凍技術の原点です。この気体は“冷媒”と言い、“蒸気圧縮式冷凍サイクル”の中で循環し、熱を伝えて冷却するという役割を果たします。(冷媒について詳しくはこちら

蒸発とか凝縮とか、水に例えていうと水蒸気や水滴ならイメージできますが、冷媒と言われてもピンときませんね。蒸発のほうは身近なところでいうと、注射の際のアルコール消毒で体感していると思います。アルコールが肌に触れた瞬間にヒヤッとしますし、アルコールが肌から蒸発し終わるまでしばらくは冷たい感じが持続しますね。これは、アルコールが蒸発するときに皮膚から熱を奪うためです。熱を奪われた肌の温度は下がっています。

凝縮のほうは、冬にお部屋で見かけていると思います。暖房をしていますと、室内は暖かくても窓ガラスに水滴が沢山ついてしまいます。これはお部屋の空気が冷たい窓ガラスに接して冷やされ、空気の中に含まれる水蒸気が凝縮しているのです。部屋でお鍋料理を作っていると、鍋から出た水蒸気が空気中にたくさん含まれるので、その分窓の水滴も増えることになります。冷たいジュースのカップの表面に水滴がつくのも空気中の水分が冷やされて凝縮したものです。空気の湿度と水滴の付く量の関係にもぜひ注目してみてください。