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研究開発紹介 Research and Development Introduction

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エンドファイトの多収栽培技術への応用(2)

3. 農業協同組合とのイネ圃場試験

イネ苗への植物共生細菌処理
イネ苗への植物共生細菌処理

選抜されたイネの植物共生細菌3菌株の実用性について、2005年度より北海道空知、上川地域の複数の農業協同組合と連携し、評価を開始しました。イネへの処理は、植物共生細菌の懸濁液を田植え数日前のイネ苗に潅注することにより行いました。

2005年から2007年までの3年間の試験の結果、ある植物共生細菌を処理したイネの茎数、穂数が数%から20%弱増加し、玄米収量は多い時で10%程度増加することが明らかになり、穂長や一穂あたりの籾数に変化がないことから穂数の増加による増収と考えられました。また病虫害は、ドロオイムシ食害、斑点米、葉鞘褐変・褐変穂が減少し、このような効果はイネの品種によらず同様に観察されました。異なる植物共生細菌3菌株によりイネの茎数増加程度、病害または虫害の抑制程度は異なっていたことから、菌によりイネへの刺激が異なることと、実用化においては求める効果に適した植物共生細菌の選抜が重要である事が明らかになりました。

2007年ななつぼし調査

▲1*「ななつぼし」はホクレン農業協同組合連合会の登録商標です。


4. 協議会によるイネの大規模実証試験

一般的に生物資材は、期待される効果の出方が不安定であると認識されており、マエカワの植物共生細菌も同様であると考えられました。そのような資材の実用性を探るためには、気候や土質等、環境の異なるさまざまな地域における評価を実施する必要がありました。
そこで、植物共生細菌の利用技術確立、推進のために2008 年から JA びばい、JAいわみざわ、JAふらの等北海道の農業共同組合と前川製作所を中心にイネ・ダイズ等環境負荷軽減技術研究推進協議会を立ち上げ、生産者と農協の協力のもとで広範な地域における実証試験を行いました。試験には、それまでのイネ圃場試験を基に開発した微生物資材「イネファイター」を使用し、空知管内を中心に2008年は35戸、約100 ha、2009年は69戸、約200ha、2010年は約70戸、250haの栽培試験を行いました。
その結果、地域やイネ品種の違いによらずおおむねそれ以前の試験と同傾向の結果が観察されました。結果の良かった圃場では穂数が十数%、玄米収量が約10%増加し、ドロオイムシ、いもち病、葉鞘褐変・褐変穂等の病虫害は数%~80%程度抑制されていました。しかし一方、このような有効な効果が観察されなかった圃場も存在しました。圃場では、さまざまな環境要因が有用機能の発現に影響を及ぼしているためその原因を特定することは困難ですが、今後もさまざまな知見を蓄積することにより、植物共生細菌を農業現場において安定的に活用できる技術を検討していく予定です。

5.病害抵抗性メカニズムの解明

植物共生細菌が付与する有用機能の発現メカニズムを明らかにすることは、施用効果の効率的発現、安定化、増強に有効です。そこで有用な効果のうち、病害抵抗性の発現メカニズムについて(独)理化学研究所と共同で検討を進めました。
植物は病原菌の感染や、害虫等にかじられた傷害等により誘導抵抗性という免疫的な病害抵抗性を発現することが知られています。この病害抵抗性は、感染や傷害の刺激を受けた部分のみでなく全身に、また糸状菌、細菌、ウイルスといった広範な病原菌に対して長期間発揮され、さらに殺菌剤と異なるため薬剤耐性菌が出現しにくいことから、永続的な環境調和型農業への応用に非常に有効な能力です。既に化学合成農薬としてはプロベナゾール、チアジニル、イソチアニルの3成分が抵抗性誘導剤として実用化され、作用メカニズムも明らかになっています。植物共生細菌による病虫害抵抗性も、植物共生細菌およびそれが共生した植物に殺虫殺菌作用は無いことから、植物自身の保有する抵抗性が活性化されたものと考えられました。

植物共生細菌によるイネの免疫機能活性化 細菌エンドファイトにより病害耐性が宿主植物に付与されるという報告はトマト、レタスなどでいくつかありますが (1,2)、イネに対する報告はマエカワの研究グループ以外になく、新規の技術となります。 植物共生細菌による免疫活性化メカニズムについては検討中ですが、プロベナゾール、チアジニル、イソチアニルとも異なり現在知られていない新規メカニズムであることが明らかになっています(3)。植物共生細菌が植物に何らかの刺激を与え、これまでに知られていない新規メカニズムにより植物の抵抗性を誘導していると推定されます。



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