ホーム > R&D Center News > ■ 夏の緊急対策! 業務用角氷を使って冷やす-大ホールでの事例-
[2011/06/29] カテゴリ:
東日本大震災の影響で電力供給事情が逼迫していることから、2011年の夏は節電のために冷房を控えめにするなどの対策を講じることが強く求められています。しかし、仮に昼間の何時間かでも冷房を「完全停止」するとなったらいったいどうなるでしょうか?
梅雨がなく夏も比較的過ごしやすい気候の北海道では、市民ホールのような公共施設でも冷房設備がないところが珍しくありません。2010年8月の上旬、そのような冷房設備がない会場をお借りして農林水産省及び当社が参画する協議会の共同開催シンポジウムを実施しました。会場選定の段階から「冷房設備が無い可能性もある」という情報を得ていたため、冷凍機メーカーの威信にかけて、シンポジウム会場の冷房対策を引き受ける事となりました。そこで、グループ会社で製氷業を行っている関係から「業務用角氷が使える!」というアイディアが浮かび、早速、地元の製氷業者を紹介してもらい氷を手配しました。業務用角氷はお祭りのカキ氷の屋台などで見かける大きな塊りの透明な氷ですが、それの大きいものをいくつか会場内の通路に配置し、またお客様にはシンポジウム用に準備した団扇を配布して少しでも暑さをしのぐという緊急対策を実施しました。
写真1 大ホールの中段通路に置かれた角氷
● 緊急対策概要
日時: 2010年8月6日(金) ※この日の最高気温 32.3℃(札幌気象台)
イベント名称: 「北海道のお米を知ろう! -新農業展開ゲノムプロジェクト
・ 美唄シンポジウム2010-」 参加者 約200名
イベント概要: 稲の低農薬栽培資材として注目される「植物共生細菌
(エンドファイト)」を活用した新農業の可能性を紹介する
イベント会場: 美唄市市民会館 大ホール(ステージと客席で約500m2)
緊急対策内容: 冷房設備がないホールであったため、業務用角氷10数個を
ステージ上、ステージ前通路、客席中段通路に配備し、冷房の代用とする。
角氷は135kgの標準サイズを半割りにした70kg強の重量で、サイズは
およそ30cm×30cm×80cm。扇風機などは併用していない。
ステージ上は花氷(角氷の花を閉じこんで凍らせたもの)を使用。
2時間のイベント終了時点で氷は3分の2ほど残っていた。
容器は市販の透明プラケース(当日、ホームセンターで購入)を使用。
その効果に関して定量的な数値データを残していませんが、客席にいた参加者からは「意外に涼しくなった」、「氷の見た目で涼しさを感じた」といった高評価を頂きました。
一般的に、室内の空気を対流させずに「周囲温度よりも温度の低い物質を設置する」だけという冷房方法を「輻射熱冷房」といいます。この輻射熱冷房の特徴は、部屋全体の空気を冷やすことは出来ないという弱点がありますが、近くにあるものを空気を介せずに「直接冷やす」ことが出来るという利点があります。山盛りのカキ氷に手をかざしたときに、10cmくらい離れていてもひんやりと冷たく感じるかと思いますが、あの感覚が輻射冷房の「直接冷やす」という特徴です。またカキ氷の容器にはみるみるうちに水滴がつきますが、夏の周囲温度と氷との温度差が大きいので、周辺空気の湿度を下げる効果が高いというのも「氷を使用する」場合の特徴です。
業務用角氷は、大型の製氷工場でブライン(不凍液)をマイナス10℃くらいに冷却し、48時間ほどかけて作られています。マイナス10℃に冷却するのは、通常の冷房のように室温を28℃まで冷却するのに比べ、圧倒的に多くのエネルギーを必要とします。従いまして、エネルギー消費量の観点で比較しますと、「角氷での輻射冷房」は空調(冷房)用に使用しても「省エネルギー」にはなりません。しかしながら、この夏のように節電(電力ピークカット)のために日中の限られた時間帯にどうしても冷房を停止しなければならない場合には、「緊急節電対策」として使用することが可能です。「氷」は最も身近な「冷たい熱を蓄えて運べる媒体」といえるでしょう。

写真2 ステージ上の氷(ステージ左側が花氷)